主婦が婦人科がんになるということ:40歳代で婦人科がんの手術を受けたAさんの語りから (1)

 乳がんや婦人科がんで生じるリンパ浮腫のケアをする、あるいはその予防をする必要のある方々の集い「ベニバナの会」を通して、私たちはいろいろな方々から病いの体験を教えていただいています。

 今回、婦人科がんの手術を受けて10年近くになるAさんの病いの語りをご紹介したいと思います。

 主婦ががんになることで生じたいろいろな思い、体験、医療者への要望について、皆様と共有して、お互いに今より少しでも良い時間を過ごすことができればという、Aさんの願いが背景にあります。


 

 Aさんの語りの内容をシリーズにして、このページに掲載致します。なお、ホームページ掲載については、Aさんのご承諾をいただいております。

 

1.自分の病気より家族を優先する

 

 がんがどういう状態でこういう手術をするっていう説明は、多分一通り説明してくれてはいたけれども、自分自身できちんと呑み込めなくて。今みたいなセカンドオピニオンという知識も私には全くなかったから。自分のことよりも自分が入院していない間の家の中のこととか、家族のこととかの方ばかり気になって、もう本当に自分の病気のことについて調べる暇がないというか。初めて〇〇病院へ行って内診台の上に上がって診察してもらった時点で、もう悪いものですねって言われて、本当に自分の病気を自分が飲み込む前にもう入院手術の日にちがあっという間に決まっちゃって。私出産以外入院したことがないんですよ。で、入院って長い間入院することにも慣れないし、術後どういうふうになるのかも全然わからないし。

 

 手術の空きができたから、〇月〇日に入院しましょうって言われて、もう2週間もないんですよね。そうなると、ほんとに病気と無縁だった私は、まず家族のことを先に考えて、私のいない間のことを考えて、それから入院しないと。どこかほかの病院に行って、違う診断をあれ(セカンドオピニオン)してっていう暇がない。子供3人いるけどみんな学校に行っているから、そっちの予定も立てなきゃいけないし。

 

 (病院の選択について)夫と3人の子供たちみんなが必ず通るところって、〇〇駅だったんですよ。私に万が一のことがあって入院が長引くようなことがあっても、家族が来れそうな病院、バス1本、電車1本、あるいは勤務の後に寄れるところは〇〇駅しかなかったんです。その周辺で調べたら〇〇病院だった。大学病院とかちょっと離れた婦人科の名のある先生のところより、私は一番にそっちを選んだんです。入院が長引いたりすると、ただでさえ入院することによって家族に負担をかけるのに、これ以上なんだかんだって負担をかけちゃいけないと思って。

 

 

(2)につづく。

 

主婦が婦人科がんになるということ:40歳代で婦人科がんの手術を受けたAさんの語りから (2)

2.術後、涙が出るほどつらかった

 

 術後どういうふうになるのかも全然わからないし、もう手術した後も多少痛くても我慢しなくてはいけない、痛みにも耐えて痛いって言ったらいけないのかなって。今思い起こせばそれ自体がストレス。で、痛み止めを打っているから痛くないよって言われているのにかかわらず痛みが全然引かなくて。痛いと訴えても点滴に痛み止めが入っているから痛くないはずだよと言われて。(辛いですよね)そうなんですよ、そうなんですよね。ほんと私、手術台からストレッチャーにボンと降ろされたときに覚醒してしまってもうそこからですよね。焼けるように傷が痛い。だから手術室から出るときは両目からもう滝のようなに涙を流していました。で、麻酔から覚めるのも早くて、これ後から聞いた話なんですけど、私麻酔が入る前に気を失っていたというか、手術室に行って背中まるくしてエビみたいに丸くしてくださいって言われてここになんかやりますよね。それ入れる前にもう眠ってしまっていたというか。

 

 で、その手術もどういう手術をしてどこまで取ったとかっていう説明は私には無かった。(家族への説明は)あったと思うんですけど、あまりにも私あの痛さに耐えられなくて泣いてしまっていたから結構な時間泣いていたと思うんですよね。

 

 ちょっと動けるようになって周りの人見たら、お腹にドレーンっていうのが必ず何本か入っているのに私は何もない。これでいいんだろうかと思いながら1週間、10日目くらいかな?それぐらいからここの縫ったところの一番上から体液が噴出してきて。その体液を止めるのにここにガーゼを、大きいガーゼを当てられて、当てられた上から貼る絆創膏でかぶれてしまって。

 

 

(3)につづく。

 

 

主婦が婦人科がんになるということ:40歳代で婦人科がんの手術を受けたAさんの語りから (3)

3.排尿障害への対応に悩む

 

 

1)手術で生じた排尿障害との遭遇

 

 (手術後)おしっこの管が抜けるのも遅く、抜けた後は尿意があるけど出ない。そのうちお腹はパンパンになって、通る看護師さんにおしっこ出てなくてお腹が痛いと訴えても、私今日担当じゃないからとか、ちょっと待ってね、今違う人に言うからねっていって誰も見てくれない。午前中に尿管を抜いて、1回お手洗いに行ったきり、夜9時の消灯を迎えるまえで1回もおしっこ出なくて。夜勤の看護師に言って処置室で相当な量のおしっこが出て、一番大きなカップが満杯になって、今2つ目取り替えるからって声が聞こえていた。それからは排尿障害との戦い。他の方が言うようなまったく出なくて自己導尿して出すっていうんじゃなくて、私の場合は尿意があっても出ない。泌尿器科にかかったら、膀胱の筋肉の働きをよくするすごく大きな薬を飲まされて、まだ若いし尿意があるからもしかしたら自分で排尿できるかもしれないって言われて、その薬を一生懸命飲んでいた。

 

 (薬効は)きっとあったのでしょうが、でも辛いですよね。踏ん張らないとおしっこが出ないし、いつまでもダラダラ出る感じで、最後まで出すにはまた踏ん張んなきゃいけなくて、こんな出し方でいいのかなと思いつつ。

 

 (術前に排尿障害についての説明は)無かった。大分元気になって、化学療法も終わり落ち着いたころに排尿障害がまだあることを定期受診の時に先生に言ったら、いや、どっちかだったんだって。排尿をつかさどる神経に腫瘍が巻き付いていたから神経を残そうと思うと腫瘍が残るし、腫瘍をきれいに取れば神経を傷つける。究極の選択で神経を傷つけてまでも腫瘍をきちんと取ろうということで取ったって。1年、2年くらい経ってからですよね。担当医から説明があったのも。で、2年半くらい経った頃から足がなんか、太ももの付け根が浮腫むようになって先生に言ったら、リンパ浮腫発症しちゃったんだねって言われた。

 

 

2)排尿障害への対応の違いで辛い思いをした患者会

 

 で、排尿障害もまだあるしということで、ちょっと患者会に行ってちょっと話を聞いてみようかなと思って行ったら、(患者から)そんなおしっこの出し方したらダメだよ、おしっこなんて踏ん張って出すものじゃないんだよってみんなに言われて。えっ?こっちの〇〇病院の泌尿器科の先生は尿意があるなら踏ん張ってでも出した方が自己導尿するより神経の回復が早いと言われて、それで出しているのに、なんでこっちに来ては出しちゃダメって言われるのかなって。ちゃんと自己導尿しないとだめだよって言う人たちを診た先生方がそういうふうに言っているみたいで。私そうやってまた泣きながら帰ってきたんですよね。なんでこんなに私みんなに責められなきゃいけないんだろうと思って。責められに行ったんじゃなくて、このまま薬を服用していてもいいものかどうか、私と同じような体験をしている人が患者会、婦人科がんの患者会だからいるのかなと思って行ったら、みんな排尿障害がある人は夜は自分で尿パックにつないで寝るっていう方たちばかりで、私と違う。土曜日に患者会があって泣きながら帰ってきて、月曜日にすぐに〇〇病院の泌尿器科に電話をしたら、泌尿器科の看護師さんがすごく優しくて、1回ちょっとお話を聞いてあげるから、何時に空きがあるからいらっしゃいって言って。で先生の前で、(患者会で)こういう相談したらこういうふうに言われたと説明をしたら、おしっこの出し方なんて十人十色なんだからみんなのいうことを真に受けて落ち込んでたら駄目だよって言ってくれた。本当に10人いれば10人の出し方があって、これが正解、これがダメっていう事がないんだから大丈夫と励まされて帰ってきたんですよね。いまだに排尿障害はあります。

 

 (排尿は努力して出していたが)便器に腰かけると自然に出るようになって、最後きちんと出すにはちょっと腹圧かけてやらないと出ないけれど、だいぶ良くなりました。

 

 

3)遠出のときに気を遣うトイレ時間

 

 でも長時間座っていると、特に乗り物に長時間乗っていると、尿意を感じないんですよね。で、すっきり出ないし、それで膀胱炎を繰り返しちゃうというか。(車で遠出した時は)尿意を感じなくても出さなきゃと思って便器に腰かけるんだけど結局出ないから、まあいいやと思っているうちに、自宅に帰ってきてなんか変だなと思って行くと膀胱炎になって。(夫を)待たせちゃいけないと思って、夫はゆっくりって言ってくれるけど、忙しい仕事の合間を縫って時間を作って父のところへ行ったり、亡くなったといえば仕事の段取りつけて行ってくれたりするから、気を使っちゃってトイレゆっくりできないというか。

 

 

(4)につづく。

 

主婦が婦人科がんになるということ:40歳代で婦人科がんの手術を受けたAさんの語りから (4)

4.入院中、気が休まらない

 

 

1)気配りの足りない看護師

 

 入院中もつらかった。6人部屋だったんです。で、物音ひとつで目を覚まして、それっきり眠れない。夜勤で回る看護師さんが尿パックから尿を取るときにカップか何か(床に)置きますよね。それをコツってやられただけで起きちゃう。それから寝られなくて。(看護師は巡回のときに)懐中電灯で照らしますよね。そのライトが一瞬私の顔に当たるときがあって、それで目が覚めちゃう。あとカーテンのシャッという音。夜勤帯で来る看護師さんの気配りが足りなくて。ごめんなさい私看護師の経験がないからこんな生意気なことを言っているんだけど。

 

 

2)周りへの気遣い

 

 入院中は辺りに気を遣いすぎちゃって。向いに寝ているおばあちゃんがあちこち痛くてシップ貼っているのに手間取っている音を聞くと、貼ってあげるかいってついつい言って、自分の手はしびれているけど気を遣ってそのおばあちゃんに貼っちゃうんですよね。しなくていいんだよ、看護師さん呼べばいいんだよって周りの人は言うんですけど。

 

 

3)耐えられないにおい

 

 抗がん剤の治療中でにおいに敏感な時に、土日でお見舞いにいっぱい来るのはいいんですけど、においで参っちゃって。足に痺れがあるから私に点滴棒を置いておいてくれていて、その点滴棒を支えに口に当てながら病室を逃げ出したことがあった。においで耐えきれなくなって、整髪料であったり、ちょっとした香水とか柔軟剤のにおいに敏感になっちゃって。差し入れで持ってくるフルーツのにおいや、隣のベッドの人がもどす音で自分も吐いちゃったりとか、本当に拾い上げればきりがないくらい。

 

 

 

(5)につづく。

 

主婦が婦人科がんになるということ:40歳代で婦人科がんの手術を受けたAさんの語りから (5)

5.それまで無縁だった便秘になった

 

 

 手術をしてから丸9年になるんですが、入院する前までは便秘とは無縁だったんですけど、入院をきっかけに便秘になって、もう便秘にいいというあらゆることはやりました。

 

 (便秘になった理由について)担当医からは特別説明はないです。便秘なんですっていったら、じゃぁ下剤出すかいっていうくらい。下剤を飲むと1日に3回も4回も(トイレに)通い、で、そのあと3日も4日も出ない。そうするとまた下剤を飲む。それの繰り返しだから、これじゃいけないと思って下剤はほんとの最後に取っておいて、自分で。たぶん浮腫のストッキングを履くので絞められますよね。それも影響しているのかなって思うんですよね。でも私の場合、ストッキング以外その浮腫を抑えるものがないんです。バンテージとか、巻くのも必要ないと言われて、ずっとストッキングしかないから、朝起きてお手洗いに行って自分でマッサージしてすぐストッキング履いたら夜寝るまでストッキング履いているものですから、お腹を絞められてこれも便秘の要因なんだろうなって。

 

 担当医がもしかしたら癒着しているかもしれないって言っていました。1回〇〇病院の内科外来に予約を取って診てもらうといいって言われたけど。内科に電話して予約して、またそこで、こういう手術をしてこういう抗がん剤を使って、あかつきに便秘になりましたっていうのをまた説明をしなければならないと思うとね。

 

 

 

(6)前編につづく。

 

主婦が婦人科がんになるということ:40歳代で婦人科がんの手術を受けたAさんの語りから (6)前編

6.弾性ストッキングを履き続けることの苦しさ(その1)

 

 

1)手の指の関節が痛い

 

 きついストッキングを1年365日きっちり上げているものですから指の関節が痛くなってしまい、昨日もひじは痛い、両手の指は痛いでストッキングが履けない状態だったんですよ。指の痛みが一番つらい夕方になると包丁も握れないし。

 

 (つらいところは)関節なんですよね、第1関節、第2関節。

 

(指の関節が痛くなってもうすぐ)丸1年。最初は片方だけだったけど、今は両方。私手首も痛めていて、右に力が入らないから左にばかり力が入って。最初は親指だけだったけど、今は中指の第二関節とかも痛くて曲がらない。あまり右手に無理をかけると、本当に曲がらなくなっちゃうから必然的に左で。去年の12月の大雪で雪かきをして肩を痛めて、肩が上がらなくなって、それでもストッキング履かなきゃならないと思って、で泣きながらほんとにストッキング上げて。

 

 (ストッキングを上げるのは)片足ずつなんですけど、自分でいいところまで持ってくるまでが大変なんですよね。夫はね、(ストッキングを上げる手伝いは)できないんです。あくまでも自分で上げないと。

 

 痛み止めって一時しのぎだし、脱ぐ時も(関節は)痛いんですよ。

 

 

2)ストッキングを履く大変さ

 

 浮腫がひどくなるのは嫌なので、酷くならないように朝晩の自分のセルフマッサージとこのストッキングだけは夏は暑くなって汗をかく前に扇風機あてて履いている。歳を取ってからスリーブやストッキングを履いている方は本当につらいだろうなって思う。

 

 ひざ下まではシュルシュルと行くんですが、そこからすごく圧が強いから、本当にちょっとずつちょっとずつ下げていかなければならないんですよね、この痛い指を使って。他の人に引っ張ってもらえばいいとも言うけど、そーっと優しく優しく引っ張ってくれればいいけれど、新しいうちに勢いに任せて力を入れて引っ張っちゃうと、引っ張ってくれた人の指の通りにそこだけゴムが伸びちゃう。

 

 私はずずずーっとこの辺まで下げてきたら、あとちょっとずつつまんでずらしていくんですよね。脛(すね)のところが一番きついから、ここまで来たら隙に親指を入れてグーッとやるんですけど、指が痛いと親指すら入っていかないので、どうしたらいいかなと思って。

 

 下肢でも片足だけのをはめている人は、あまり暑さを感じないんですよね。オマタとかないから素足でいられるじゃないですか、片足だけ包んでいればいいだけだから。本当にこのフルのストッキングって真夏は、酷です。蒸れます。蒸れるとオマタがかぶれます。

 

 ピターってふっついているから夏脱ごうと思ったって、下着のある部分はシュッと脱げるんですけど、ここから先が下がっていかないんですよ。本当にね、苦痛です。

 

 圧が下がればもう少し柔らかくて、シュルシュルとはいけるらしいけど、圧が弱いのを履いて浮腫がひどくなったらさらに強いのを着用しなければならなくなってくるから。ひと夏圧の弱いのを履いて涼しくなりました。はい、じゃ圧の強いのに戻しますっていったときに浮腫がひどくなっていればどうしようってなりますよね。

 

 

3)看護師の変なアドバイス

 

 病院で、いつもリンパマッサージしてくれる看護師さんに、指が痛くてストッキングがあげられないって相談したら、じゃ、片足ずつのストッキングを履かれてみてはと勧められたんです。これお貸しできるので履いてもいいですよって言われたけど、指が痛くて上げられないって言っているのに、なんでこの人はまたストッキングを出してくるんだろうって。それが疑問に。片足だけのストッキングも結局はゴム手袋を履いてあげなきゃいけないでしょ。じゃ、指が痛くてストッキング履けないときは、軽めの包帯でも巻いてみたらどうですかって出してくれるなら、包帯巻くくらいなら指が少々痛くても教えてもらった通りに巻き上げていけばいいから楽ですけど、片足のストッキングを出されて、同じ話ですよね。

 

 古いストッキングをシュルシュルと履いたらどうですかってまたその看護師さんは言うんですよ。でもその古いストッキングも足首のところだけはキツイままなんです。私(の浮腫は)ここ(大腿)の付け根なんですよね、一番ひどいのが。で、そこが伸びちゃってるから古いストッキング履いても意味がない。

 

 看護師さんは、ストッキング履く前に30分早く起きて、枕元に痛み止めを用意して、大体痛み止めを飲むと3、40分で効いてくるから、痛み止めが効いてきたなというときに、ストッキングを履かれたらどうですかって言うんですよ。その看護師さんは、私がいつも朝何時に起きて、こういう生活をしているっていうのを知っているんですよ。私、大体3時半に朝起きるんです。そうすると、その痛み止めを飲むのに3時に起きるのかいって。どこまでこの看護師さんは私の生活を知っていて、こういう事を言っているんだろうと思って。

 

 私みたいな人が増えてくると思うし、歳をとってからスリーブやストッキングを履く方は本当につらいだろうなって私言ったんですけど、歳をとってからだと浮腫もそんなに進まないから、ストッキングやスリーブなんて履いたりはめたりしないよってその看護師さんは言うんだけど、そうじゃないよなって。歳がいってたって、浮腫があったって働く人は働くだろうし、ストッキングも履くだろうし、スリーブだって履くだろうし。なんか違うよなって私思うんですよね。

 

 皮膚科の看護師さんは浮腫の知識がないから、痒くなったらいつでもかゆみ止め塗ってねって言うんですよ。ストッキング履いているから夜寝る前ぐらいしか薬塗れないんですって言ったら、塗るたびに脱いで、また履けばいいんじゃないですかって言うんですよね。あーこの看護師さんも浮腫のストッキングに関しては一つも知識ないんだなって。ちゃんとパソコンの画面には、何年何月に頸がんの手術をして、手の皮膚がボロボロになって皮膚科に行ったことも書いてあって、リンパ浮腫を発症して弾性ストッキング着用って書いてあるにもかかわらず、看護師さんがそういうからストッキングに関しての知識がまるっきりないんだなって。

 

 

 

(6)後編へつづく。

 

主婦が婦人科がんになるということ:40歳代で婦人科がんの手術を受けたAさんの語りから (6)後編

6.弾性ストッキングを履き続けることの苦しさ(その2)

 

 

4)皮膚が擦れる

 

 (弾性ストッキングは)皮膚にも負担がかかって、擦られて焼けた感じになる。なんでそんなところ擦り傷あるんだろう。なんでここかゆくなるんだろうって考えたら、あの時脱ぐ時に擦れたなって。たとえ家族であろうと夫であろうと言葉で言うのが難しいから、(頼まないで)自分でちょっとずつちょっとずつ下げていくしかないなって。新しいストッキングを着用して、2か月半とか3ケ月過ぎてくると全体的に劣化してくるから引っ張ってって言って足を出せるけど。

 

 一昨年の夏だったかな?ストッキング履いている全体にあせもが出来ちゃって、ひざ裏がとてもかゆくて掻き崩してしまったんですよ。あせもがただれたみたいな感じになって、皮膚科の先生は、(私が)頸癌で浮腫を発症してストッキング履いてるのを知っていて、軟膏と飲み薬を出されたんです。

 

 

5)こんなものがあればいい

 

 夜寝る前に、金具というかそういうものにストッキングをはめといて、朝起きたらそーっと足を入れて、その機械を抜くとぴったり合うようなそういうものがあればいいと思う。

 

 金具とかがないにしても、私みたいに見るからに浮腫という足じゃなくても、軽く巻けるような、バンテージみたいなものがあればいいなって思う。サポーターみたいなものでもいいし、指に負担がかからず、痛い指でもシュルシュルと履けたり、伸縮包帯のようなクルクル巻き上げていけばストッキング履いているときと同じ圧迫がかかって浮腫がひどくならないものがあればいいんじゃないかなって思うんですよね。

 

 (保険適用で買える包帯とは)違ったかたちの包帯ですよね。少々指が痛くても包帯だったら巻き上げていくだけだから楽だろうと私は思います。

 

 

6)手間のかかるストッキングの手入れ

 

 (ストッキングは)洗濯機かけられないし、おしゃれ着洗剤でも使えないし、柔軟剤使えないし、もう手洗いと押し洗い。洗った後はバスタオルに包んで包んで手で叩いて、それで干す。でも私みたいに指が痛いと洗うのもままならない。

 

 (塗った軟膏が)ストッキングに付いちゃって、ついたところからストッキングが劣化してくるんですよ。如何せんゴムだから。べとべとした感じの軟膏だとストッキングに付いた軟膏が落ちないんですよ。そうすると変なシミになって残るんですよ。夏だからストッキング1枚履いて、スカートなり履くじゃないですか、7分丈の半ズボンとか。そうするとシミだけがポコンと目立つんですよ。何汚れたストッキング履いているのって言われたことがあって、これまた説明するのも面倒くさいなと。

 

 

7)保険適用範囲の「半年で2足のストッキング」では生活できない

 

 私より浮腫が酷くて、包帯を巻いてスポンジみたいなのをあてて、ウレタンみたいのをあてて、それから幅の広い包帯を巻いている方も、バンテージ類っていうのを半年に1組しか買えない。ここもまたおかしいですよね。普通に巻く包帯と、その上に巻く脱脂綿みたいなのと、ウレタンと、幅の広い包帯とで1セットで、半年に1回1セットしか買えない。その方はストッキングも必要なので、半年に1回バンテージを買って、半年に1回ストッキングを買うんです。ストッキングとかバンテージが半年に1セット。ストッキングだったら2足。スリーブとかグローブ類だったら2セット。なんでそれしか買えないの。

 

 ハイ、あなたは明日から出張です。わかりました、出張に行きます、でも私にはパンツが2枚しかない。今履いているのを1枚と、今朝洗ってきて部屋に干してある1枚のパンツしかないって。あなた2枚のパンツで何日も回せますかって。

 

 もうちょっと保険適用の範囲をスリーブ、グローブ、バンテージ、ストッキング類に関して広げて欲しいんですよね。

 

 私、〇区の〇〇さんという男の市議さんにも言ったことがあるんですよ。もうちょっと保険適用の範囲を広げて欲しいって。で、2000年にストッキングやスリーブ類がやっと保険適用になったばかりで多分通らないって言われたんですけど、2足で回せない。無理です。どんなに丁寧に扱っても2ケ月持つか持たないか。如何せんゴムだから伸びる。

 

 これが3足とか、3セットとかあれば今洗えないけど痛みが引いたときにまとめて洗おうとかってことが出来るわけですよ。

 

 リンパ浮腫を発症している患者に限って3セットまで保険適用で買えるようにしてほしい。乳がんでリンパ節を取って浮腫を発症している人も、片腕だけのスリーブやグローブもふた替えっていうか、着用の他にもう一つしか買えない。そうじゃなくてそういう人も3セットまで。浮腫がひどくてバンテージしかしてない人も、2セットあれば楽だよねって。

 

 

8)同じ社会保険事務所なのに場所によって対応が全然違う

 

 最初は実費で払って申請して7割戻ってくる、これも手間なんですよね。で、払った時の領収書をもって区役所や社会保険の事務所に行って申請するんです。医者に着衣証明書と診断書との2枚を書いてもらって、領収書と、向こうにある書類に何年何月にこういう手術を受けて、リンパ浮腫を発症して必要だというのを自分で申請書に書かなきゃいけない。自宅から行って半日つぶれちゃう。札幌駅の北口にある直接社会保険組合の中に入っているところでも受け付けてくれるって教えてくれて最近はそこに行っていますけど。

そこへ行くと1回1回来るのが大変だから、ここに郵送で82円の切手を貼って、封筒に入れて送ってって教えてくれて、来れないときは送ってくれたので間違いなくちゃんと申請して出すからと言ってくれて。でも〇区の社会保険事務所では送ってくださいとは一言も言わなくて、一応申請出しますけど決定するかどうかわかりませんと言われるんです。札幌駅の方にあるところでは、きちんと申請出しますから大丈夫ですよ通りますよって言ってくれるんですよね。同じ社会保険事務所なのにどうしてこうも対応が違うのって。同じ交通費をかけていくんだったらこっちの方に来ちゃいますよね。暑い中ご苦労様ですって言ってくれるし。申請に行く時期が2月だったりすると、今日は道滑りませんでしたか、寒い中ご苦労様、これからは送ってくださいねって言ってくださいますし。

 

 

 

(8)へつづく。

 

主婦が婦人科がんになるということ:40歳代で婦人科がんの手術を受けたAさんの語りから (7)

7.医療者のリンパ浮腫の知識の程度によって異なる安心感

 

 

 手術したときにリンパ浮腫の説明は、リンパ浮腫になったら困るからしゃがんで庭の草むしりはしない、虫に刺されない、あとは日焼けをしないこと、蜂窩織炎をおこすのでってこれだけ。蜂窩織炎って何ですかって聞いたら、聞いた看護師さんも蜂窩織炎のことについては知識がないみたいで、虫に刺されたりすると起きる病気なんだよっていうくらい。

 

 ここ(患者会)に来て〇〇先生に教えてもらって、蜂窩織炎のこと初めてわかった。足が熱をもっていたらこういうふうに冷やしなさい、氷もただ冷凍庫から出してきた氷じゃなくて、砕いて砕いて平べったいビニール袋にこうなるように角々が直接皮膚に当たらないようにっていう説明を受けたのは〇〇先生が初めて。だから〇〇先生に教えてもらった時のプリントを私はまだ大事に持っています。ちゃんとファイルにしてあって。疲れても蜂窩織炎が起きるし、季節の変わり目でちょっと体調がっていう時にも起きるんだよって教えてくれたのも覚えている。浮腫をひどくさせないのは体重を増やさないことだよっていうのも頭にあるし。実際に写真も見せてくれた。

 

 

 

(8)へつづく。

 

主婦が婦人科がんになるということ:40歳代で婦人科がんの手術を受けたAさんの語りから (8)

8.がん治療の後遺症はずっと続いていて治った実感はない:「がん後遺症難民」

 

 

1)抗がん剤副作用のしびれ

 

 世の中のがんの名医たちは、がんを取った後、抗がん剤や放射線や免疫療法をやって、これだけ生存率が上がるとか言う。でも術後の後遺症は。排尿障害もそうだし、便秘もリンパ浮腫もそうだし。私は抗がん剤の後遺症で右足がいまだにしびれているんですよ。

 

 ビタミンB12を長い間真面目に朝昼晩飲んでいたんですけど、さっぱり効かないって婦人科の担当医に言ったら、「そうでしょ、あれあんまり効かないんだわ」って言われて。じゃ、何で先生飲ませるの。いまだに抗がん剤の後遺症で右足の裏は完全にしびれている。痛いというか、炭酸飲んだ時のシュワシュワ感。そういう後遺症が出ている人はどこの病院で診てもらえばいいのか。

 

 普通に歩けるし、小走りもできるけど、そのたびに右足には痺れの衝撃が走ります。抗がん剤の後遺症です。疲れが溜まってくると、右手の指先全部にしびれが出ます。熱いもの触ってもしばらくして、あっこれ熱かったんだっていう事も。フライを揚げて指先が油に浸かっていても、気がつかないときもあります。なんで指先こんなに真っ白くなっているのと思って、ああ朝お弁当で揚げ物していたあれだと気がついて、気をつけようっていうことが今だにあります。

 

 

2)私は「がん後遺症難民」

 

 先生方は術後の(腫瘍)マーカーの数値を気にし、生存率を気にし10年経ったら検査して病院卒業しましょうと。私も言われたんです。今年9年目で9月に受ける検査が何事もなければ来年1年病院通ったら、手術した病院は卒業しましょうねって。でも、後遺症に関しては、どこの病院に行けばいいんですか?近所の整形外科、皮膚科、挙句の果てには心療内科?足の痺れもそうだし、皮膚の疾患もそうだし、がん後遺症難民はどこの病院に行けばいいんでしょう。いい名前でしょ。がん後遺症難民。自分で勝手に名前つけているんですけど。

 

 (病気が治ったという)実感はないです。幸いにも転移や再発はないけれど。実際私の知り合いも、再発や転移がないんだからいいじゃないって。元気で家族の世話だって仕事だってできるならいいじゃない、私から比べたらねって。再発しました、転移しました、入院です、手術です、次は抗がん剤ですっていって入退院を繰り返すよりいいじゃないって。確かにそうです。家族の世話もできるし、仕事もできる、行きたいところへも行ける、遊びに行きたいといえば行ける。でも、そういうのって比べちゃいけないものですよね。

 

 

(9)へつづく。

 

主婦が婦人科がんになるということ:40歳代で婦人科がんの手術を受けたAさんの語りから (9)

9.全身を総合的に診てほしい

 

 今日はがんの検査で婦人科、明後日は内科、その次は整形外科だけど乳がんの方の予約をしているからって、なんか全部をいっぺんに診てくれるということは出来ないのかな。このきつい(弾性)ストッキングを1年中きっちり上げているので指の関節が痛くなってしまって、この指を診てくれるのはいったいどこなんだろう。婦人科じゃ見てくれないですし、〇〇病院の整形外科って、また改めて電話で予約をして、大きい病院は紹介状がないと手数料が取られるからおいそれと大きい病院にかかれない。そうすると近所の整形外科ってなって、インターネットで自分の指の状態を入れて、検索して出てきた病院に行ったんです。

 

 こういう私たちをきちんと診てくれる先生がいたら教えてほしい。ちゃんと全身を診てくれる先生。

 

 手術した病院の担当医は、同じ病院でも整形外科に電話して予約して診てもらってって。内科に電話して予約して診てもらって、泌尿器科電話して予約して診てもらってって。この先生一人で診てくれない。

 

 症状だけ言えば、皮膚科に、整形外科に、耳鼻科に行けばいい、足の痺れがあれば神経内科に行けばいいというのはわかるけど、もとを正すとここにあるわけだから。違う病院にかかればまた一から書かなきゃいけない。確かに問診票には「過去5年以内に大きい病気をして、手術をしたことがありますか」と書いているけど、病気が病気だから掘り下げて書かなきゃいけないのかなって思いますよね。5年以内だから書かなくてもいいだろうと思うけれど、これ書かなきゃまずいよなって。リンパ浮腫を発症していて、現在弾性ストッキング着用って書いたって、なんのリンパ浮腫かわかんないだろうな、先生。そうしたらやっぱり書かなきゃならないですよね。婦人科がんっていっても、卵巣がん、子宮体がん、子宮頸がん、全部をひっくるめてのがんがあるし。

 

 

 

(10)へつづく。

 

主婦が婦人科がんになるということ:40歳代で婦人科がんの手術を受けたAさんの語りから (10)

10.もうちょっと話を聞いて欲しい、教えて欲しい

 

 

1)指の関節が痛くなった原因のリンパ浮腫には関心のない整形外科医

 

 万が一リウマチだったら困ると思ってリウマチ科のある病院に行って検査して診てもらったら、「今のところリウマチじゃなく、変形性関節症で間違いないです」と。で、「指先を使うような仕事をしていましたか」って聞かれて、「特にはしてないけど、ただリンパ浮腫を発症して」ってそこまで言ったら、「いや、そういうことは聞いてない」って。「いや、先生違うんですよ、リンパ浮腫を発症して」って私がまた同じことを言おうとしたら、「いや、それは聞いてない。がんのことに関して僕は専門外だし、聞く必要がないから」って。「いや、きついストッキングをね」って私が言い出したら、横にいた看護師さんが、「心療内科に行かれたらどうですか」って。話しているうちに更年期障害があるし、真夏だったので汗が出てくるんです。自分の言いたいことを途中で遮られてしまうとどうしたらいいかわかんなくて、誰に言ったらわかってもらえるんだろうと焦っちゃうと汗出てきちゃって。その汗を拭きながら、「先生」って話そうとしたら、看護師さんから「心療内科紹介しますよ」って言われて、その看護師さんとやり取りをしているうちに、「痛い時は痛み止め飲んで逃してください、それしか治療の方法がありませんから」と言われて。私、精神病んでるの? 問診票に2008年にこういう手術を受けて、リンパ浮腫を発症して弾性ストッキング着用って、関節が痛いものですから字が汚いんですけど、ちゃんと問診票に書いているのにどうしてこの先生はわかってくれないんだろうと思って。こんな思いしているの、私だけかな。

 

 子宮頸がんっていう病気の名前に甘えているつもりもないし、がんだからって威張って生活をしているわけではないです。もうちょっと配慮してほしいなって。「僕外科だから」「僕内科だから」ってそうやって自分の専門分野ばかりじゃなくて、いろんな患者さんが来るんだから話を聞いてほしいなって。パソコンの画面を見ながら私の言っていること入力するばかりじゃなくて、もうちょっと話を聞いてほしい。そんなこと思っているせいか、心療内科いかれたほうがって言われちゃうんでしょうね。

 

 

2)私の気持ちをわかろうとしない医師には「ハイ元気です、先生」と嘘を言う

 

 入院したときは「手術できれいに取り切れる自信があるので、おそらく2週間で退院できます」って言われて、そのあと抗がん剤に入るもの聞かされてなかった。私リンパ節取ったのも知らなかったんです。で、浮腫を発症した後、「先生、今だから聞くんですけど、リンパ節っていったい両方に何個あって、何個取ったんですか」って質問したんです。自分の体のことだし、知りたい。その時に医者の言った言葉が、「そんなこと知ってどうするの?」「悪いと思われるリンパ節は皆取ったよ。何個あって何個取ったかなんて知ってどうするの。生きて生活できているんだからいいでしょ。」って言われました。いや、そうですけどね、でも知りたいじゃないですか。片方には何個、片方には何個あってあなたの場合、ここまで悪くなってたから左はほとんどとって、右は10なん個取ったって知りたいじゃないですか。だから(今)、腫瘍マーカーの検査、CTとか検査を受けて、結果が出る1週間後聞きに行って、その先生に「どうだい?調子」って言われるときは、「元気です」って答えるんです。この先生に何を言っても無駄だなと思って。まだ痺れがあるといっても、「それはもう死ぬまで治らないね」って言われたり。言うだけ無駄じゃないですか。「効かないけど漢方飲んでみるかい」って言われたら、「効かないなら出すなよ」って言葉悪いけどそう言いたくなっちゃいますよね。だからその先生の前に座って、「どうだい?調子」って言われたら、ニコニコしてばっちり化粧もしていって、「ハイ元気です先生」って。このあと私ヨガに行くとか、映画見に行くとか言って、絶対調子が悪いこと言いませんもん。言っちゃいけないんだなって。「それだけ元気だったらいいよね。マーカーの数値も異常ないし、今のところCTも問題ないから、じゃ1年後ね。」って言われて、「はい、ありがとうございました」って言って帰ってくるんです。

「浮腫は?」

「浮腫は違う病院で診てもらっていますから。ちゃんとストッキングは履いていますよ。ほんとはね、先生のところで浮腫診てくれると一番いいんですけどね。手術の内容もわかっているし、どういう状況でリンパ節を取っているのもわかっているし。」って言うんですよ、私。「いやーうちね、浮腫見れないからね」って。「いいんです、だから違う病院で診てもらっていますから。」それがほんとのところです。

 

 

(11)へつづく。

 

主婦が婦人科がんになるということ:40歳代で婦人科がんの手術を受けたAさんの語りから (11)

11.婦人科がん術後で浮腫のある人に言ってあげた

 

 

 最近(ある女性から)聞いたんですけど、メラノーマを発症して、できた場所が婦人科だったんですよね。女性器を大きくえぐり取ってしまって、転移していたリンパ節も取ったって。この頃靴を履くと左足だけ窮屈になるんですって。なんか浮腫みたいな感じで、調べると、乳がんや子宮がんや婦人科がんで手術した人の浮腫に関しては載っているけど、メラノーマが載ってない。

 

 私は彼女に「どこに行けばいい?」って聞かれたから、「まずは手術をした病院、手術をしてくれた先生、またはその手術の内容をよく知っている看護師さんに相談しなさい」って言ったんですよ。「そしたら絶対どっかで引っかかってくれて、こうしたらは?あそこの病院に行ったら?っていうことが、今ならあるから迷わずそっちに行って」って言いました。あっちの病院、こっちの病院ってまわされることなくきっとその先生、その病院だったら対処してくれるから、自分勝手にマッサージしたり、美容のマッサージをする前にそっちに行きなさいって私言ったんですよね。(その人は)「よかった、話してみて」って言って行かれたから、良かったなと思って。

 

 

(12)へつづく。

 

主婦が婦人科がんになるということ:40歳代で婦人科がんの手術を受けたAさんの語りから (12)

12.はっきりしない見通しの治療に、いったいいくらかかるのだろう

 

 今は2週間もあれば、セカンドオピニオン取れるっていう話を聞くけれど、当時はセカンドオピニオンの「セ」の字もなかった。セカンドオピニオンも30分につき6000円とか、延長するごとに2000円追加とかいう話を聞いたら、とてもそんなお金出せないですよね。お金のかかる子供たちも抱えているし、多分、皆さん私の年代だと、マンションや家を購入されていれば、住宅ローンも払っていかなければならないし、やりくりのことを考えちゃいますよね、一番にね。で、がんの手術はいくらお金かかるんだろうって。はっきりとした明確な料金もないし。やっと退院できると思ったあかつきには抗がん剤が控えていて、抗がん剤って1クールにつきいくらかかるんだろうって、未知の世界ですよね。

 

 手術が終わったとき、担当医から「とりあえず退院してみるかい」と言われたんです。「え?とりあえず退院してみるって、やっとおしっこの管も取れたし、何とかおしっこも自力でできるし、歩けるし、食欲もあるし、先生、退院じゃないんですか?」「言葉を濁さないではっきり言って。」って言ったら、「いや、抗がん剤があるんだよね。」って。「え?先生そんなこと言ってなかったっしょ!」って私言ったら、「いや、あのリンパに転移があってね、全身にね。」っていう話があって。「いや、とりあえず退院します。退院して家族と話し合ってからまた来ます。」って。で、看護師さんに聞いたら、「使う抗がん剤にもよるけど、お金かかるし、抗がん剤やめますっていう患者さんもいますよ。」っていう返事だったんですよ。・・・え?そんなにお金かかるの?

 

 家族に話をしたら、やっぱり生きていてもらいたいし、抗がん剤やろうって話になったんですけど、いったい私はいくらかかるのだろうって。

 「金じゃない」って周りの人は言うけど、「いや、お金です」って言うの、私はね。お金がないと、髪の毛抜けたってかつらも作れない。ウィッグも作ってもらったんですよ。医療用としてって領収書に書いてもらうと医療費控除になるけど、ただかつらを作ってもらうと医療費控除にならない。これ、盲点ですよね。そういうのも病院はきちんと教えてほしい。今はどうかわかりませんが、私が(手術を)やった200X年当時はウィッグを作ってもらった所で、「領収書を書きますけど、たとえ10万以上かかったと言っても医療用と書いてないと、医療費控除になりませんからね。」って教えてくれたんです。だから私知り合いで、がんの手術して抗がん剤で髪の毛抜けてっていったら、「かつら作るときに医療用としてって一筆入れてもらいなさいよ。」って言うんですよ。控除になるからねって。確かに社会保険事務所に行けば高額医療費何とかっていうあれはもらえますけど、そこまでは教えてくれませんよね。

 

 

(13)へつづく。

 

主婦が婦人科がんになるということ:40歳代で婦人科がんの手術を受けたAさんの語りから (13)

13.障害者マークがあれば・・

 

 

1)私は十分障害者じゃないですか

 

 ストレスが講じて脳溢血とか脳卒中、心筋梗塞とかを起こして倒れられて体に障害が残る方もたくさんいます。身体障害者として介護保険も適用になります。障害者年金もおります。公共交通機関の乗り物も無料になります。こうやって(ストッキングを)履いていること自体もう(自分も)障害者じゃないですか。見た目私は健常者に見えますよね。足がつらくて地下鉄の中で障害者用の席に座ったら、「いい若いもんがどうして座るんだ」って私言われました。そこ座っちゃいけない席だろうって。妊婦さんはお腹に赤ちゃんがいますってこういのを下げていれば堂々と座れます。若い人でも杖を突いて歩いていれば、そこに座れます。私たちは何もないから座るとそう言う。私実際に2回ほど言われているんです。病院の帰りに足がつらくてつらくてどうしようもない、ちょっと座らせてもらおうと思ってちょっと座っただけなのに。

 

 

2)理解されない

 

 スーパー銭湯に行ってこのストッキングを履いていると隣にいたおばあちゃんに、「そうまでして細く見せたいもんかい、アッハッハ」と笑われたこともありました。それからは1回か2回しか行ってない。その1回か2回も行く前に家でストッキングを脱いで。「そうまでして細く見せたいもんかい」って笑われて、その時私も冗談で返すだけ心に余裕がなかったものだから、早く上がって、汗引けたら早く履かないと浮腫がひどくなるっていうだけで頭がいっぱいだったから。

 

 

3)障害者マークが欲しい

 

 そういうね、せめてそういうマークをくださいって。こういう鞄にね、つけて歩くマーク。お年寄りみたいに明らかに分かりますよね、お年寄りだったら杖付いてるし、明らかに分かります。私たちみたいな人はね、何もないんですよ。

 <中略>こういう私みたいな宙ぶらりんな人には何か、こういう鞄とかにつけて歩くマークがないんですかって。手の不自由な人だって、浮腫がひどくてグローブをはめている人だって、隠してしまえばわかりません。いい方の手に荷物をもってます。悪い方の手でつり革にはつかまれません。でも障害者用の席には座ることはできません。その方は立って地下鉄に乗るって。仕方なく食べ物が入っている袋も地べたに置くって。直に口にするものが入っているものを床に置くってことは抵抗ないですか?食べ物が入っているんですよ。そのかばんや袋をあなた地べたに置きますかって。

 あのね、乗り物もそうだし、銭湯でもそうだし、私はね乗り物乗るのでも全部割引して、障害者手帳をよこせとかそんなことを言っているんじゃないんです。乳がんで腕の浮腫がある人でもそんな辛い思いまでしてすることなくね、若い方でも浮腫発症してつらい思いしている人たくさんいると思うんです。特に腕だし。そういう方がね、ちょっとこうバックに下げているマークを見るだけで気持ちよくすっと障害者用のシートなり座席なりに座れたら。

 

 

*最近いくつかの都市では、ご希望の方に「ヘルプマーク」が配布されるようになりました。

 

 

 

(14)へつづく。

 

主婦が婦人科がんになるということ:40歳代で婦人科がんの手術を受けたAさんの語りから (14)

14.生きることのつらさ

 

 

 私は地下鉄やバスの中でそういう(優先席に座ったら非難されるなどの)嫌な思いをしているから、なるべく混む時間帯は避けてバスや地下鉄を利用しています。やっぱり言われると自分自身すごくショックだし、周りの目線を考えると、とっても自分自身がかわいそうになってくるんですよね。死んでしまった方が早いんでないかって思ったくらい、ほんとに私、自殺しようと思ったくらいで。こんな中途半端な体になるなら手術の時に先生殺してくれたらと何回も思ったことあります。殺してくれればよかったのにって。そんなね、きれいに腫瘍取る前にブスッと殺してくれればこんな思いしなくてよかったのにって、もうこの9年間で何回もあります。

 

 <中略>だから私は手術をして抗がん剤やって、その抗がん剤の後遺症もあるけど、その後の方が、生きているほうがつらかった。

 

 

(15)へつづく。

 

主婦が婦人科がんになるということ:40歳代で婦人科がんの手術を受けたAさんの語りから (15)

15.がんでも気持ちよく働ける、気楽に治療を受けられる社会を

 

 あの、がんに関しては、がんを患いながら治療を受けながら働いていくということも、とても大事なことだと思うんです。ちょっと風邪ひいて休んでたんだっていう感じで、「いやーちょっと抗がん剤受けるのに休んでたんだ」って気楽に言える社会も大事です。すごく大事だと思います、私。 新聞紙面とか、テレビを見ていても、がんを患っていても気持ちよく働けるね。社会に出て働くばかりが働くじゃないよって、そこ大事だけどね、とても大事だけどそこばかりじゃないんだなって。

 

 

(16)へつづく。