主婦が婦人科がんになるということ:40歳代で婦人科がんの手術を受けたAさんの語りから (16)

16.看護学生に伝えたい

 

 

 学生さん、私みたいな親を持っている方がいると思うんです。あの、「できることやるかい?」じゃなくて、うちの娘もそうなんですけど、できるんだったら率先してやってあげてくださいって。お茶碗洗い一つとってもそうだし、腕に浮腫ある人だったらお茶碗洗い一つするんでも、いちいちビニール手袋をはめてやらなきゃいけない。これもまたストレスなんです。それとお風呂掃除。ストッキングをはめてのお風呂掃除とか、床拭きつらいです。ほんとにつらいです。マシンとか買えばいいじゃんっていうけれど、そのマシンだって3000円、4000円で買えれば、私もとっくに買ってます。

 

 率先してやってもらいたいのは台所の片付け、風呂掃除、床拭き。あと、腕に浮腫ある方だったら洗濯物を干す。乳がんを患って間もないお母さんも頑張れば、痛さこらえて(腕を)上げて干すんですって。そうじゃなくて脱水終わったっていう、洗濯機の音が聞こえたらもうぐちゃぐちゃで文句言われてもいいから、やろうよって。文句言われたら腹立つけど、「初めからうまくできる人いないでしょ、お母さん」って。2回目もっとうまくできるよって。3回目もっときれいにできるよって。「今日はかぁちゃん、ここまでしかできない、勘弁。」って言葉がね、子供たちから素直に出るように。やってやってるんだから文句言うなっていうことは絶対言っちゃいけない。これ禁句。母親にしたら好きでこんな病気になったわけじゃない。

 

 「見舞いに行ってやってる」っていうのも禁句。見舞いに行ってやってる?私これ夫にも言われたんですけど、仕事を都合つけて毎日見舞いに行ってやってるべって。「やってる」ってどういうこと?これ絶対に禁句。

 

 その時(母親から何か)言われて腹立っても、我慢して笑う。「この次うまくできるって、かぁちゃん」くらい。あとは後ろ向いて舌出してたってかぁちゃんにはわかんないんだから。後ろ向いてドアバタンと閉めてクソババァって言ったってかぁちゃんにはわかんないんだから。でも心の中ではかぁちゃんにしたら心の中ではありがたいなって心で泣いている。冷蔵庫の中開けて牛乳1本ないなって思ったら、乳がんの人でも腕上げるの辛かったら、牛乳1本持って帰ってくるだけでもつらいんですよ。手術した方の腕は使えない、いい方の腕で牛乳をもってくる。ドアは開けられない、冷蔵庫は必ずみんな開けますよね。開けて何がないってわかったら、「かぁちゃん今日帰りにこれこれ買ってくるからちょっとお金頂戴」って。「1000円もかい」って言っても、かぁちゃんにしたら涙が出るほどうれしい。してもらうと本当にうれしい。今日も娘ね、仕事休みでいるんですけど、「風呂掃除するかい?」って。私は「して」とは言わないんですよ、自分で気が付いてやってほしいから。「いいよ別に」って(言うと)、「じゃしないよ」って自分の部屋に引っ込む。そうじゃなくて、これかーちゃん風呂掃除だなって思ったら、汚くてもいい、少々湯垢が残っていても湯垢ついていても死なないから率先してやる。そう思いません?少々洗面器に湯垢ついていても死なないでしょ。この辺にカビはえるわけじゃないでしょ。コペコペになったお皿に食べ物のせても食中毒にはならない。少々グラスが汚くても、それで麦茶を飲んでもお腹なんてこわさない。ただそこで文句を言っちゃうとしなくていい喧嘩をしちゃうとね、この病気って長いから後味悪いじゃないですか。

 

 

(終)

 

 

「主婦が婦人科がんになること」は、今回が最終回です。

 

16回のAさんの語りから本当に多くのことを得ることができました。

 

ありがとうございました。